起業するなら自己実現か、利益重視か

 ここ最近とくに”起業”というキーワードがインターネットのなかでちらほら散見される。枠にとらわれない自由な生き方や、旧態依然とした日本の雇用システムに異を唱える風潮が若い世代を中心に席巻している。ここ10年で確実にパラダイムシフトの波が押し寄せており、働き方の多様化は進むだろう。これは世間一般で言われている社会のレールを外れても、比較的自己実現に邁進することが社会的に受け入れられる土壌が育ってきているということだろう。その自己実現の一つの方法として起業という選択肢があると思うが、起業というキーワードはとりわけ勢いがあり、爆発的な成長力をはらんでいる業界に限って取りざたされているように私は感じている。だいたいyahoo newsでも起業というキーワードが上がってくるのはIT系のアプリ関連のニュースや若年層のスタートアップに関する話題だ。若者の多くはこういった技術系のイノベーションに多大な関心を寄せて、良いアイディア一つでで大きく人に影響を与える事ができるインターネットに何か人生を大きく飛躍させるヒントが隠されていると考えているように見える。ただ一つ確認したいのが、人生を飛躍させるであろうと期待している起業の真の目的が、商売として利益を残す為にサービスを立ち上げることなのか、自己実現の一環として利益を度外視してでも実現させたいサービスがあるのかという点かどうかということだ、これによって人に与える価値が全く違ってくるだろう。私が見る限り今日インターネットを席巻しているサービスのうちで前者が当てはまるケースはないし、利益を挙げる為に邁進した結果そのようなサービスが生まれたとは思わない。イノベーションから何らかのパラダイムのシフトが生まれるのは納得できるが、まだ誰も受け入れる準備も整っていない革新的な発想のアイディアを考えだし、ブルーオーシャンを創出して人をひきつけるには、出口の見えない荒野をひたすら前進するしかない。またそのイノベーションが自分に利益が還元されるとは限らないし、労働対価を期待しているなら成功なんてまずしないと思う。イノベーションとはある種情熱に取り付かれた使命感がなせる業であって、金儲けをしたいなら有史以前から存在する小売という方法で小さく始め大きく育てる方法が近道なのではないかと思う。ひとつ付け加えておくと大手のネットベンチャーが拡大を続けユーザーの獲得に成功しているのはサービスが提供する優良なコンテンツではなくマーケティングの結果であるということだ。