経済の主役は中国、東南アジアになる。


   
  前回、70年周期でどのように歴史が変革をとげていくかということを幕末と第二次世界大戦終戦時の歴史的な証左を元に検証しました。そして戦後の70年間を例に出し時代はどういうプロセスを経て変革の局面に近づいて行くかをその時代ごとのリーダーが担う役割を元に”志”、”能”、”公”、”商”と4つの世代に分類してその変化を観察しました。まず最初の3つの世代”志”、”能”、”公”に属するリーダー達は、”志”の世代のリーダーが作ったヴィジョンを創り上げ、それを広めてブラッシュアップさせていき完成させます。そして”商”の世代では既存の古い価値観を壊し新しい価値を想像することが求められます。  

さて今回は2015年以降日本の経済はどうなるか、世界経済の主役はどこになるかということを人口統計と消費支出から予想できる景気循環の観点から話していこうと思います。

簡単に好景気の定義を確認しておきましょう。経済の景気がいいという状況はお金の循環サイクル早いという事。モノが売れることで企業の利益が増大し、賃金の上昇に反映されると個人消費が増加するという循環が好景気とよばれるものです。日本の個人消費が国の経済規模を示すGDPの半分を占めている事から、景気は家計の消費支出に大きな影響を受けています。簡単に言えば消費する人が多くなればそれだけ景気の循環にあたえる影響は大きいという事です。裏を返せば家計の消費の割合が高い世代が増えれば景気が上向くということです。こうした観点から経済の動向は人口統計から極めて正確に予想ができるようになります。

さて総務省統計局の2014度の家計調査報告によると世代別の家計消費の割合は40代未満が18%、 40~49歳が21%、 50~59歳が23%、 60~69歳が20%、 70歳以上が16%となっていました。この指標から最も消費支出の割合が高いのは50代で、その前後の世代を合わせるとおよそ日本の消費支出の60%以上を40代から60代後半までの人間で占められているということになっています。この割合は2014年以前の調査結果を見る限り多少の誤差はあれあまり変動はありません。つまりこの世代が好景気循環を作る鍵になります。この世代が多ければ景気は底堅いものになりますし、少なければ景気の循環は滞ります。

もちろん好景気にはこれ以外にも様々な要因が重なりますが、人口統計や家計支出から単純に景気の循環を論ずるとすれば、出生率が景気の鍵を握るということは分かるでしょう。政府が躍起になって少子化対策に政策を打ち出している理由が分かると思います。内閣府が発表している人口推計調査によると世代別の人口の割合は、現在2015年では60~69歳が14%で15~59歳が55%。内閣府は50年後の予測を60~69歳が13%で15~59歳が44%で総人口が一億人を割るとしています。つまりこうした客観的なデータが表すところは、政府の打ち出す政策をどう楽観的に捉えても人口が今後大幅に減るという少子化の波は食い止められない事実です。

2020年以降は出生率がピークと言われた団塊の世代ジュニアが消費を抑える世代になっていき確実にこのままだと景気は後退します。その代わり経済の主役は中国に移り変わるという事になります。今現在団塊ジュニアの世代がおよそ1400万人いるといわれ1970年代出生率のピークと言われていましたが、1958年から1960年にかけて中国では大躍進時代がありその頃に生まれた世代が約3億人いると言われています。この数字からしても中国の経済の加速が一時のバブルで終らないというのは分かります。要は中国の消費の伸びは今後数年間の間に今よりも加速度的に大きくなり、GDPは増大します。この流れは止まらないでしょう。

人口が減るという事は単純に消費支出の影響だけでなく、新しい技術に対して積極的に消費する世代を失うということになります。つまり相対的に人口が縮小すれば若い人間も少なくなり、新しいテクノロジーが消費されなければそこからイノベーションが生まれる可能性が低くなっていくということです。

こうした予測から判断できる事は2015年以降日本が時代の主役、経済の主役を他の国に託してバトンを渡さなければならないということになります。これが所謂次の70年周期のトレンドになります。中国の先には経済発展著しい東南アジアが控えています。世界経済の中心がアジアになるというのはおそらく必然でしょう。