これからのリーダーの条件


 
 リーダーとは諸子の先頭に立ち自らのビジョンをグループや組織に投影して引っ張っていくひと、というイメージがあり、戦後からの経済史や現在の会社組織のあり方を観察していると少数の将官とその他大勢の戦略をサポート、運用する兵隊という構図が組織のベースになっており未だにその考え方は主流です。  

 そう考えると現在多くの人がリーダーという言葉に対して抱くイメージはある組織やグループの長など大勢の人間を取りまとめている少数の社会的に影響力を持つ人だと思います。ただこの考え方も将来時代の変遷とともに定義が変わってくる可能性があります。   

現在はインターネットが発達しており様々な情報が瞬時に手軽な媒体で取得できます。そのため現代人の一人一人の情報リテラシーは格段に高くなっており、昔のようなリーダーシップを取る側とヴィジョンをサポートするその他大勢の側の間にある情報落差は確実になくなってきています。良質な情報に出会えれば矛盾や問題点に気づき様々な意思決定に疑問を持つ事ができます。   

外部からの情報を取捨選択しては主体的に取り込み行動に反映できる人は組織から自立して問題解決に取り組みリーダーシップを発揮しトップダウン方式による有無を言わせない命令下達方法がなし得ない価値の生み出し方をします。例えば本来は稟議書をまわして上からの決済を通さなければ経費を落として調査できない案件でも、私費を使って外部の機関と繋がってスピーディーにリサーチを薦め同業他社が追いつけない早さで結果を出す人もいます。   

リーダーシップを集団の統率という定義として認識し、同じ色で組織の構成員を染め上げる事に終止している企業ほど今後硬直化して多様な価値観を生み出すことが難しくなり、末端でもリーダーシップを発揮している人間が生み出す価値を潰す可能性があります。

現在の人が持っている価値観の多様性はまさに今の縦割り組織では100%生かすことは難しくなってきています。私の考えではマジョリティーの集団を統率するマイノリティーのリーダーから個々が主体性を発揮し影響力のあるマジョリティーのリーダーへ変貌を遂げるのではないかと思っています。

個人が生み出せる価値を最大限に生かそうと思ったら縦割りではなく横のつながりを意識する方が遥かに効率的に成果を挙げられると思います。それこそ縦割り組織という枠から脱皮して全ての個人が主体的にリーダーシップをはかることができる仕組みができれば優秀な人間が潰れてしまう機会費用を防ぐ事ができます。

IT業界を見ると分かりますが、当たり前ですが有名企業の構成員だから注目や尊敬を集めるといったことはないでしょう。何かサービスを作り出した。世の中でまだ発掘されてない価値を誰よりも早く提供したとういう実績を残した個人に注目が集まっています。実績を残した個人が有名企業に勤めていたとしても、企業のブランド価値よりも個人が出す実績に影響力が傾いています。

今後経済の主戦場はアジアにシフトしてきます。今よりも確実にスピードを求められる時代が来ると思います。意思決定の遅れがいかに致命的になるかは現在古いシステムを改善しない縦割り組織が身をもって体感する事になると思います。柔軟で臨機応変な意思決定がいかに重要かという事が

戦後から90年代までは会社の肩書きによって得られる裁量や権限の大きさは取引できる企業の信頼に比例するものでしたが、現在は違います。個人でもアウトソースを請け負う企業はいくらでもありますし、クラウドワークスを主体としたフリーランスが質の高い仕事を請け負ってくれます。つまり誰もが横のつながりの組織を築ける可能性があるということです。

マ・ジェームズという人をご存知でしょうか?彼は台湾出身の根っからのゲーマーでゲーム好きが高じて「新生ヒストリカ」というオンラインゲームを作りヒットさせた人です・

彼はプログラマーではないしデザイナーでもなければシナリオライターでもない。おまけに開発費用も持っていませんでした。いったいどうやったのかというと彼はクラウドファンディングで自分のアイディアと企画を説明し公に出資をつのり、その金を元手にフリーランスの技術者をかかえるクラウドサービスでゲームのデザイン、シナリオ、プログラミングをアウトソースして作品を創り上げました。

新進気鋭のベンチャーでも当たりの作品を出すのが難しい中、個人としては異例の10万ダウンロードという素晴らしい実績を出しています。実はこうしたプロジェクトを成功させた人がキックスタータなどのクラウドファンディグサービスからぽつぽつと生まれています。こうした横のつながりをうまく活用できる優秀な人間が今後のリーダーになっていくと私は思っています。

さてこうした優秀な個人の影響力が日に日に増して行く中で、組織のあり方はどのように変化していくのかということを神田昌典先生は企業のライフサイクルの変化を元に説明しています。

まず企業のライフサイクルは高度経済成長期から比べて現在は10分の1以下に縮小しているという事です。1970年代の企業の寿命はおよそ70年と言われ、1983年は30年、2000年は12年、2008年は10年そして現在は5年かそれ以下だと言われています。これは世の中の変化のスピードが上がり変化に柔軟に対応できない企業が次々と淘汰されているということ。すなわち企業のライフサイクルが硬直した組織で価値を生み出して行く事が限界に近づいているという事です。

そのかわり個人がお金を生み出せる環境がどんどん整っていますし、チャレンジできる環境も国境を越えてインターネット上のサービスで展開されています。もうトレンドは縦割りの組織から横のつながりのチームに移行しようとしています。これからのリーダーの条件は特定のマイノリティーにだけ当てはまる物ではなく、全員が持たなければ、特に先進国の人間は発展途上国の労働者階級に落ちることになります。

2015年以降のリーダーの条件は横のつながりを最大限活用して価値を生み出せる個人です。