70年周期で時代は変革する


ダイレクトレスポンスマーケティングの第一人者であり、著名な経営コンサルタントである神田昌典氏が、2015年以降の未来予測について、時代の時代の変換サイクルはおよそ時代の70年周期で起こっているということを提唱しているアメリカの歴史家、ニール・ハウとウィリアム ストラウス・ハウが共著した本ジェネレーションを元に興味深い知見を述べていたのでこちらで共有したいと思います。

さて2015年と言えば終戦して丁度70年にあたる年です。そう70年周期で時代の転換期が訪れるとすれば終戦というパラダイムを経て70年経った今年2015年が丁度新しい時代の転換期になるということです。

この時代の転換期が本当に日本の歴史において継続的に70年周期で訪れているかということを1945年、第二次世界大戦終戦をさらに70年さかのぼって歴史的な事実を確認すると、およそ68年前に西南戦争が勃発しています。

近現代の切り替えポイントとして分かりやすいのは明治維新ですが、大政奉還が行われて以降諸藩の全士族が開国派を標榜して明治政府による天皇親政体制、そして急速な近代化を支持していたかというとそうではなく当然保守的な考えを持つ士族はたくさんいたと考えられます。

ですが時代の流れとともに明治政府の影響力が増してくると廃刀令や金禄公債証書発行条例などを発布し、武士の特権である帯刀、俸禄などを奪う政策を施すことになり、これを契機に諸藩の士族と明治政府の間で内乱が勃発し西南戦争へと発展して行きます。

明治政府の勝利で幕を閉じた西南戦争以降日本の近代化そして民主化は急速に発展して行く事になります。神田昌典先生はここを時代の転換期と位置づけています。

このように70年周期に起こった大きな出来事を大局的に見て行くと、政体を揺るがすほどの大きな変革が起こっています。

幕藩体制の崩壊から明治政府に時代のバトンが渡され近代化へと躍進したかと思えばそのおよそ70年後、富国強兵という考えの元、西洋列強と肩を並べて強大な軍事国家を築き上げ、戦争を外交交渉の切り札や手段として使っていた時代は敗戦とともに終わりをつげ資本主義体制を整えていくことになります。

こうした70年周期の丁度節目にあたる2015年は今年か、あるいは近い将来何らかの大きな変革が行われるのではないかというのが神田先生の主張です。

時代の変革が行われる70年の間に共通して起こるパラダイムの変化について志・能・公・商という言葉を使って戦後70年の経済の移り変わりを例に説明されています。

志(志がある人)


戦争で荒廃した日本を救うのは、理想を掲げて物を作る事。こうした理想を掲げて戦後のどん底から経済大国に押し上げたのは当時30代半ばから40代の戦争を経験し敗戦そして終戦を目の当たりにした世代です。井深大や本田宗一郎は混沌とした戦後の日本から資本主義へと躍進する起点を作った人たちです。理想を掲げる為の”志”がなければ起点をつくることもできません。

能(能力がある人)


戦後17年18年たつと、東京はオリンピック景気に沸き立ち世の中にはモノが享受され豊かな生活が営めるようになり始めた時代でした。戦後"志"によって道を切り開いた人達はもう50代、次の時代を担う30代〜40代の世代にバトンを渡す時代です。

モノをつくる事が時代のリーダーだった”志”の時代と違い、そのモノをいかに広げて行くか、普及させていくかがこの時代の課題でした。様々な知見やリサーチを元にマーケットを広げて行くには知的な生産性を求められます。この時代のパラダイムは”能力”が高い人がリーダーとして活躍するという意味で神田先生は”能の時代”と位置づけました。

この頃にバトンを渡された人と言えばイトーヨーカー堂の創業者伊藤雅俊、ダイエーの中内功です。米国のチェーンストアーをいち早く日本に導入し安定した価格でモノを流通させて行きました。

公(仕組みを整えられる人、モノを良くする人、管理する人)


そして”能”のリーダーがバトンを次の世代に渡す頃になると、モノは全国のあらゆる地域に流通してモノを享受する事による利便性は格段に高まっていました。しかし急速な発展の裏には商品の杜撰な管理や、不良品の流出、流通に不備が生じてお店で欠品が相次いだりしていました。次のバトンを渡されるリーダーの役目はこうした流通や商品生成の仕組みの不備を是正し良い商品、そして顧客中心の流通サービスを作り出して行く人またはその考えを提唱し世の中に訴えて行く人です。

経営コンサルタントの大前研一先生や堀 紘一先生は、効率的でより生産性のある組織のあり方や、より付加価値の高いサービスを生産的に提供できる企業の仕組みやロジックを考え、消費者のニーズや問題点の本質を見つけ出し極めて戦略的な解決策を企業に提示しています。

これがだいたい1980年代 ジャパンアズNo1と呼ばれていた時代です。

商(モノを壊す人)

次にバトンを渡される世代の時代はモノはある、全国に流通網が敷かれ会社組織がより機能的に組織的に経済を動かしている時代です。ではすでに経済的に成熟期に入ったこの時代にどういうパラダイムのシフトが実現されるかというと古い価値観を壊して新しい価値観を想像するということです。

ITによる情報革新がもたらした新しい価値観は従来のふるい価値観、金銭中心、物質中心の価値観を見直そうという役割があります。

70年間におこる4つのパラダイムの変化は歴史的に大きな変革に向かってその時代を動かすリーダーが次の世代にバトンを渡しながら道を切り開いてきました。

志、能、公までは志の時代のリーダーが掲げた理想をいかに実現できるか、ビジョンを実現できるかということに主眼を置いていました。モノを作り、モノを広げ、モノを良くするという時代のリーダーが担う役割の変化が経済の豊かさを実現しました。

これが商の時代、90年代半ばから2000年代に突入すると現状の古い価値観やシステムを壊し新しい物を想像する組織や個人があちらこちらで見受けられるようになります。これは言わば70年周期の後半に近づいているという一種のシグナルです。

なぜかというと後半に近づくとそれまでの価値観を壊さなければならない4つのパラダイムのなかでは極めて大きな変化が訪れるのです。

幕末の黒船来航、第二次世界大戦の真珠湾攻撃などは次の時代に移り変わるきっかけとなったものです。現代で言えばインターネットの代頭はまさにそれまでの価値観を大きく変えざるをえないできごとです。現に、インターネット上で公開されている情報は古い考え方や常識を疑ったり、批判したりするものが多いです。マスコミの批判、従来の日本の会社システムの批判、サラリーマンというそれまで常識とされていた日本のワークスタイルの批判などは、黒船来航時、アメリカの開国要求をされるがまま日米和親条約の締結に踏み切った幕政への不信と日本国に対する危機感が士族を攘夷に駆り立てたのと同様、自ら問題点や矛盾に気づき始めます。

こうした歴史サイクルの終盤には次の変革に移行する為に様々な矛盾や問題点が世論から噴出して政局にも影響を与えています。例えば1941年頃の歴史を振り返ると政府では毎年首相が変わっています。現在はどうでしょうか?小泉政権以降毎年のように政権交代を繰り返しています。これは70年サイクルの終盤に差し掛かっているというサインです。

70年周期から考えると2015年は節目の年ですが、まだ政体を揺るがすほどの大きな変革は起こっていません。まだ予測を立てて準備をすることはできます。これから2015年以降どういった経済になっていくか、そしてどういう人が次世代のリーダーになっていくかということを次回神田先生の知見を拝借しながら説明したいと思います。