商品を通して体験を買う?

 私たちが商品の購入を決断するとき潜在的に何を求めているのでしょうか? 私自身はそれを客観的に見る方法はないと思っています。なぜなら感情は常に動いているからです。私はいつもその時の感情の流れで買い物はしてしまいます。特に大きな買い物でも、買い替え時かどうかはその時の感情が購入を決断してもっともらしい理由は結局のところよく考えてみると後付けです。昨今は購入する商品やサービスは山のようにあり、商品のクオリティーだけを見て感情が動き購入を決断する時代ではありません。競合店がたくさんあれば、その商品を特定のお店で購入する理由はありませんし、類似の商品で、極めてクオリティーが高い商品があれば、それを購入する理由はありません。良い商品でもそこで買わない理由はたくさんあります。逆に消費者の購入の傾向や不満を理解していかに機転の利いた付加価値がつけられるかが、消費者の感情を動かすポイントになってきます。 付加価値とは単純に商品を魅力的に見せる施策ではなく、商品の購入の先に何を求めているかを知って問題解決をするという意味です。

購入しているのは本当に商品なのか

 ファミレスに入ると実に様々な人がいます。近所の付き合いで雑談している主婦、課題に追われてレポートの作成に集中している大学生、一人だけでははかどらない勉強を友達としている高校生。ドリンクだけで粘りまくる中学生、限られた時間で急いで昼食を取っているサラリーマンなど。見覚えがある光景だと思いますが、この中でファミレスに行くと決断した最終的な目的がファミレスが提供している特定の商品を購入して食べるという人はどれくらいいるでしょうか? ファミレスで何か食べたい物があるから行くというよりそこで得られる様々な体験を期待して行くのではないでしょうか。誰かと雑談する、誰かと勉強の時間を共有するなどの体験をファミレスで販売されている商品を通して購入していると言った方が妥当な気がします。
 カフェなんかはどうでしょうか?皆さんは本当に洗練されたコヒーの味を求めて特定のカフェに入りますか?中にはコーヒーマイスターなみにコヒーに関する知識を蓄えている人は、コーヒーを楽しむ目的で行くでしょう。しかし私はコーヒーを味わう為にカフェに入店した事は今まで一度もありません。出先でたまたま時間が空いてたまたま目の前に合ったスターバックスを覗いてみるとわずかにテーブル席が空席だったため時間が来るまでくつろごうと思ったり、都内の大きな書店で購入した本をゆっくりと読める場所と時間を購入する為にカフェに入店したりします。
 ファミレスやカフェで、メニューに提示されている商品はそういった人をターゲットにラインナップしているのが分かります。ファミレスは比較的メニューの幅は広いですが、一般的に認知度が高く幅広い世代に支持される人気商品がラインナップされ、ドリンクバーなどで滞在時間などを増やして商品の販売を促進しています。そのため一品物やサイドデッシュ、デザートといった手軽にオーダーできる商品が充実しているのが分かると思います。  カフェは読み物や書き物をする目的で入店する人が比較的多いのでは雰囲気作りにとても力を注いでます。また客が滞在時間が細かく設定できるように飲み物のサイズは何段階にも分かれています。客が商品以外で何を目的にして来店するのか、商品を購入するのかを具に観察すれば、どのような商品とサービスを欲しているのかが分かると思います。