海外に出れば日本経済が停滞している理由が肌で理解できますよ


皆さんは海外で生活した経験はありますか? 今まで一度も海外で生活した事がない人はチャンスがあれば一度経験した方がいいです。新聞やインターネットを通してでは自分の国が抱える問題や経済情勢は身近な物とは捉えず、これらを自分の生活と切り離して考える傾向に陥るからです。海外に出てその国の情勢を肌で感じながら日本を眺める事で気づく事はたくさんあります。大事なのは異国に赴いて、その国と自国との比較を行うことで客観視できる両者の経済情勢から自分の立ち位置を知ることです。

さて私は去年の5月下旬から8月にかけてカンボジアに出張に行きました。現地で3ヶ月滞在していると実に様々な事が分かってきます。

カンボジアはASEANの中でも特に貧しく、農家の暮らしは貧困をきわめており一年間の収入が10万円に満たない農家は全体の6~7割です。プノンペンやシムリアップなどの都市部で過半数を占める労働者の毎月の賃金の平均はおよそ1万円から2万円程度。日本では収入が安定していると学生から人気の公務員の給与は一部のエリートを除いて月1万円かそれ以下。警察官や軍関係者はそれでは生活ができないのでトゥクトゥク(タクシー)や雑貨店、飲食店などの副業を営んでやっと生活ができる感じです。生活苦から逃れるためASEANのなかでも戦後急速に発展を遂げたタイなどに出稼ぎに行く人は多いです。

国民全体の1割もいないと思いますが、富裕層は存在します。しかしほとんどは政府関係者か政府の息がかかった政商といった感じでしょうか。国民の税金やODAからの開発援助資金の一部が政府関係者の裏金に消えると国民の間でまことしやかにささやかれているみたいですが、町の様子を見ればそれが事実がどうか分かります。プノンペンは首都にもかかわらず信号機が数十台しかありませんし、道路はガタガタで舗装が必要です。また幹線道路はプノンペンの都市部を離れるとコンクリートの舗装が途切れ、むき出しの土の上を車が走る事になります。インフラ整備も援助の割に行き届いてないということです。

またプノンペンの郊外に行くと平然と身売り話を持ちかけてくるブローカーがいて、農家が借金の形に自分の娘を差し出す光景が目に浮かびます。海外から顧問として招聘されているカンボジアの政府関係者などがこの売春に応じて逮捕されたというケースが後を絶ちません。私がシムリアップに滞在していた頃は現地の学校の校長先生が女子生徒を身売りして逮捕されていました。

法治国家としての日本から見ると政府内部の問題や法整備の遅れ、経済格差や売春ブローカーの取締など解決すべき問題は山積していますし、経済情勢や政治の問題に目を向けると現在の日本とは比べ物にならないほど悪い意味で問題を抱えている国です。

にもかかわらずカンボジア人は政府の政策を批判して悲嘆にくれる様子は私が見た限りではまったく見られませんでした。常に前向きで、現状をいかに好転させるかチャンスをうかがい、目をギラギラとさせてます。

今の生活から抜け出したい、まだ小さいけどこの会社をいつか成功に導くために今全てを犠牲にしても働くという人が私が知り合ったカンボジア人の中でも結構いました。中には今までの公職や地位を全て捨て自分の財産で事業に打って出た人もいます。

この国は貧しいし日本の経済と比べると遠く及ばないかもしれませんが、それを補ってあまりある国民のパワーがあります。なんとかして成り上がってやろう、このまま政府にたよれないという危機感が伝わってきます。

知り合いの紹介でIT系のベンチャーを立ち上げた若者に出会った時は衝撃でした。彼らは二人でインターネット上にカンボジア人向けのwebサービスを立ち上げて運営しているのですが、彼らはパソコンを買うお金がないので、学校のPCを使ってプログラミングしていたそうです。しかし学校でPCを使用できる時間は数時間と限られているため、何十冊のノートの上にアイディアとコードがびっしりと書かれていました。しかもプログラミングの勉強を始めたのが立ち上げる半年前だというのだから驚きです。

カンボジアの経済成長率がASEANの中でトップである事実は数字を見るまでもなく現地に赴けば肌で感じる事ができます。

対して日本はどうでしょうか、経済の停滞や失速の原因は政府が作り出しているとして国民はその保障を声高に政府に要求をします。雇用、税金、社会保障。もちろんこれらは問題はありますが、カンボジアの失業率や社会保障の未整備などを考えれば批判できるだけ幸せというものでしょう。自分の生活を保障するのはほかならぬ自分自身のたゆまぬ努力だという事をいつしか忘れているような気がします。

日本は工業大国で世界随一の技術を保持している国だから日本のような先進国はいつまでも反映し続けるといった安易な優越感や他国を見下した態度はこれからは足を取られるでしょう。

現状に不満を感じている人ほど海外に出て、その国のエネルギーを感じて日本の状況を客観視できれば、自立した行動がとれるようになったり、自立した考えが育まれるようになると思います。